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"time blue"レビュー
クラン・コラ Cran Coille:アイルランド音楽の森 (アイリッシュ・ミュージック・メールマガジン2008年12月号)に、京都の「fieldアイルランド音楽研究会」名物ぶちょーこと、いくしまとおるさんが、シャナヒー2ndCD"time blue"についてレビューを掲載してくださいました。
許可をいただいたのでご紹介します♪


■■ シャナヒー《time blue》■■ いくしまとおる──────────────────────────────────  

 大阪が誇る女性集団、北欧ブリテン諸島トラッド系バンド「シャナヒー」が、この度素晴らしいセカンドアルバム《time blue》をリリースされます。12月24日先行発売、一般発売は来年1月25日です。詳細はこちらまで。http://shanachie.jp/  

 《time blue》ですが、「ぶちょー」特権を利用して、一足早く観賞させていただきました。素晴らしいです。おかげ様で「ぶちょー」は興奮しています。もっとも今回の興奮は、「静かなる大人の興奮」ではありますが。

 世界は光で満ちている。万華鏡のような「輝き」に満ちた状態、その眩しさ故に、まともな視覚は不可能なはず。そんな「輝き」の世界から「色」を 抽出し、視覚可能な世界を産み出すのが「眼」の役割であり、核となるのが、眼球の一番奥にある「網膜」である。「網膜」に存在する細胞のうち、明暗を感じ るものは「杆体」、色を感じるものは「錐体」と呼ばれていて、「錐体」はさらに「赤」「緑」「青」の三種類に分類される。

 生物が視覚を獲得したのは、今から5億年ほど前、いわゆるカンブリア大爆発の頃。この時に獲得した「最初の視覚」はいったいどのようなもの だったのだろうか。遺伝子学的見地からは「青色錐体」が一番古く、それは明暗を感じる「杆体」よりも早く産み出されたと考えられている。もっとも、カンブ リア大爆発の頃、生物は海の中で生活していたわけだから、「青色」を最初に獲得するのは自明のことかもしれない。

 大袈裟に太古の歴史に思いを馳せなくてもいい。「青色」に包まれている時、僕たちはあたかも「ホーム」にいるような落ち着いた気分になる。これは「青色」はよりプリミティブな色だからではないだろうか。

 つまり、「青色」は我々の原点だ、と僕は信じている

  シャナヒーの新しいアルバム《time blue》。「青色」が満ちあふれたジャケットを目の前にした時、僕の脳裏に浮かんだのは上記のような理屈でした。音の世界ももちろん「青色」に染まっている。その「青色」 は、ありきたりの澄みきった「青色」ではなく。どこまでも限りなく深い「青色」だった。

 シャナヒーの「鼓動」のようなリズム感、これがぶちょー的「お気に入り」ポイントです。

 彼女達はルックス的にも音楽性もいわゆる「癒し系」にカテゴライズされているようです。「癒し系」といえば奇麗な音が充満する美しい世界。確かにそういった要素を彼女達は持っています、が、しかし、それだけでは「ぶちょー」は反応できません。

 彼女達の音には強烈なリズムがあります。あたかも「鼓動」のような、ひとつひとつの音に「意志」を感じる、そういったリズム。だから聴いていると、どんどん引き込まれてしまう。突き動かされるのではなく包み込まれていくような、そんな心地の良いリズム。その引き込まれた世界は、微妙に高ぶった気持ちをフラットにしてくれます。そういう点では「癒し系」なのかもしれませんが。

 大多数の「癒し系」は「空」を目指しています。浮遊系とも言えます。空の向こう、遠くの違う世界に連れて行くことが使命であったりします。それはそれで悪くないし、僕自身も時にはそんな気分を欲するときもある。

 対してシャナヒーは「大地」を目指しています。彼女達が提示してくれるのは地に足がついた現実世界での癒し。言い換えれば「安心感」といことになるのでしょうか。

 《time blue》。アルバムの世界は限りのない「青色」で満ちあふれている。かつて僕達はそんな場所で必死に生きていたのかもしれない、そんな記憶を呼び起こすように響くシャナヒーの「鼓動」。そのリズムにより記憶はますます「青色」に染まっていく。そこはもしかしたら「胎内」なのかもしれない。そこでは様々な感情、喜び怒り哀しみ楽しみその他諸々、が浄化されていく。そしてフラットになった気持ちを胸に、僕達は再び現実世界に踏み出していくのです。

 レコ発ライブがあります。2009/01/12が大阪、01/18が神戸です。詳細はシャナヒーHP まで。http://shanachie.jp/  

 なお、ワタクシは01/12に参戦です。もう予約しました。ありえない状態の「ぶちょー」を発見するのも「いとをかし」かと思われます。

<いくしまとおる:ギタリスト、京都の「fieldアイルランド音楽研究会」名物ぶちょー>                
by shanablog | 2009-01-10 02:51 | CD情報
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